散々江連先輩に怒鳴られて、細かい雨が降り注ぐ中、ひとりで道具を片づけた。
何度か倉庫に閉じ込められたことがあったけど、きょうは走らされるくらいで済んだ。
周のお父さんときょうも帰り道で会えるだろうか。
「なあ」
肩を叩かれて振り返ると、サッカーボールを持ったひとがあたしを見ている。
まだサッカー部のひとは練習していて、野球部のひとより遅くまでいつも残っているのを思い出した。
「塩尾瀬ってひとが、向こうの門で待ってるって伝言預かってるんだけど」
彼が指差したのはいつもは使わない、玄関の反対側にある門だった。
「……え?」
「それだけだから」
周りに怯えながらすぐに立ち去ったサッカー部のひとを見送る。
体操着の色を見て、やっと同級生だと気付いた。
―あたしなんかと喋ったら、あのひともいじめられるかもしれないのに…。
あのサッカー部のひとは、まだ練習している。どこのクラスのひとだろう。
―まさか友梨に何か言われて…あの門のほうに誘導してるんじゃ…。