ふたりとも小学校に通っていたときは話してくれたのに、いまでは友梨にべったりで、あたしのことが嫌いだ。
ひとりぼっちにされているような喋り方を終えたふたりが、あたしを見上げた。
「知ってるのにひどいよね。友梨乃の気持ち無視してさ。幼なじみとか言ってるけど、あんた十歳のときに転校してきたよね」
「遠慮したら? 友梨乃のほうがずっと好きだったんだから」
周りからも笑い声が聞こえて、あたしはその場から離れた。
教室から出て行こうとすれば、周の引き止める声があたしの影を踏んだ。
「一花、もう授業始まるけど」
さっきまで友梨に見せていた温かな笑顔とは違う、どこか呆れた顔の周。
あの子たちはまだあたしを見ている。逃げたい、この場からどこか遠くに行きたい。
「席戻らねえの?」
腕を掴まれてしまえば、もう抵抗はできなかった。
席についてカバンから教科書を取り出すと、友梨が振り返る。
「構ってちゃんやめてよ。周静が迷惑じゃない」
一河さんたちが周に詰め寄って「勘違いするよ、あの子」と言う。
怖い顔であたしを見る友梨から目を逸らすと、何度も心に唱えた。
ひとりにならないために、こうするしかないんだ。
―大丈夫、いまは冷たい態度を見せてくるけど、いつかは優しくなってくれるから…。
いつの間にか教室に入ってきた塩尾瀬があたしを見ていたなんて、知る由もなかった。