期待が膨れ上がって、あたしの心をどんどん満たしていく。

 塩尾瀬がズボンからハンカチを取り出して、あたしの頬を拭った。またいつの間にか泣いていたらしい。

「意味ならある。自分が育てたバラを好きなひとに渡すのが夢だったんだから」
「す、好きなひと!」
「まあ今回はほとんど兄さんと彼女が育てたから、もう一度いつかの未来で渡すよ」

 何の色のバラがいいかな、と弾んだ声で塩尾瀬が言う。

「それで108本のバラを渡すんだ。浅咲なら、きっとその夢も叶えてくれる」

 希望が詰まった不安の風船はどんどん破裂していく。
 塩尾瀬の幸せそうな表情を、できることならカメラに収めたいのに。体が固まってしまってちっとも動けない。


「浅咲に思われてる俺は世界で一番幸せだ」