「好きだから俺の本当の彼女になって、って」
「…へ?」
「この苗木だと半年後には咲くから、それまでに返事考えておいて」
「遠くない!?」
「ハハ」

 歯を見せて笑う塩尾瀬はさりげなくカメラを奪うと、そのまま唇を重ねた。

「あの帰り道を歩きながら、開花した赤いバラをあげるよ」

 口を開くたびにまた唇が触れあう。塩尾瀬の赤らんだ目じりが幸せそうに緩んだ。

「卒業したらさ、新しい場所で、今度は種からバラを育てようぜ。三年はかかるから毎日楽しめるよ」
「ま、って! あたしの頭パンクする!」

「俺も兄さんの彼女と会ってびっくりしたんだ。結婚の話を聞いたときは辛かったのに、いざ会ってみると平気だったなんてな。多分、俺も知らないうちに浅咲のことを思ってたんだよ」
「塩尾瀬それ告白してるよッ、すっごく普通に!」

「顔を合わせるたびに代わりの彼女にしたことが、本当に辛くて苦しかった。早く本当の彼女になってほしかったけど、なかなか言い出せなくて。でも浅咲ならずっと待っててくれるかなって期待もあった」
「ね、ねえ半年待つ意味ある?」