「そもそも茎とかじゃなくて木…だよね。苗なのに木ってあるんだ」
「そう、花屋で去年の春ごろから育ててたらしいけど、そろそろ花も開くって」
「へえ…、どんな花なんだろう。全然わかんない…」
ゾウのじょうろを片づけた塩尾瀬は、まだ咲いてる百日草を見つめた。
「バラの苗なんだ」
「バラ! 秋にも育てられるなんて贅沢だね」
「開花したらさ、俺浅咲に言うから」
「何を?」
あたしはカバンからカメラを取り出して、バラの苗をさっそく撮ってみる。
次のアルバムはバラに決まりだ。
何度か角度を変えて撮り終わると、おでこに滲んだ汗を拭って、塩尾瀬のほうを見た。
写真を見てもらいたいけど、まだ会話が途中のままだ。
フィルムカメラでも撮りたいし、一度でいいから塩尾瀬とツーショットで撮ってみたい。
うずうずしながら塩尾瀬を見上げると、耳まで赤らんでいて驚く。