「……片思い? え、一花聞いてないんだけど。何? あんたたち両片思いなの?」
「わ、わかんない…」
「待って、うちすごく邪魔じゃない? あとで絶対話聞かせてね」

 邪魔じゃないと言おうとしたときには、茉莉はさっさと教室に戻ってしまった。

「さすがテニス部…」
「俺陸上部かと思ってた」

 それとなく気まずい空気があたしたちを包み込む。

「そ、そういえばのどかさんが言ってたけど、喫茶店にお花持っていく予定だったの?」
「あー…、そう。約束してたんだけど結局持っていけなかったな」
「百日草はもうちょっとで枯れちゃうから、持っていけないよね…」

 十月を迎えたいま、空はどんよりとしていてどこかすっきりしない。
 でも隣にはひまわりみたいな髪色の塩尾瀬がいる。それだけで景色はいつも綺麗だ。

「これ、何の苗だと思う?」

 ちょっと緊張したような声で訊ねてきた塩尾瀬に首を傾げた。

「秋の花?」
「いや、いまの季節でも育てられるけど秋って限定はされてない」
「なんだろう…、チューリップ?」
「違う」

 あと知ってるのはバラとパンジー、ラベンダーくらいだ。