あたしは綺麗にいなくなってしまった千日紅に思いを馳せた。

「で、何植えるの?」
「マーガレットとか?」

 茉莉の問いにあたしが答えると塩尾瀬が「いや」と言った。

「兄さんの花屋から苗持ってきた」
「え、良かったの?」
「ああ、兄さんの奥さんが詫びだって」

 奥さんって塩尾瀬の好きだった彼女のことだろうか。
 意外にもあっさりと言ったので、何も知らない茉莉は「へー」と相槌に留めた。

「詫びって?」
「俺が花屋に通うことになって、片思いのあの子はさぞ寂しがってるだろうからって。俺をひとりじめする詫びなんだと」