一瞬だけ意識が飛んでいたようで、あたしにもたれかかったまま周がうめいた。

「つーか何でお前がここまですぐに来れたんだよ? 地元か?」
「うん、すぐ近く。のどかさんから山って聞いて、兄さんの家には行かずに自分の家の周り走ってたら、怪しい集団が山小屋に集まってたから」
「走って…? 徒歩で来たの?」

 山の中を駆け回るなんて、意外にも塩尾瀬は野生児だったんだろうか。
 新たな発見に目を輝かせていると、塩尾瀬は首を傾げた。

「バイクだけど」
「え、バイク持ってたんだ!」
「いや、父さんの」
「それよりお前無免許だろ…」
「ああ、見逃して。緊急だったし」

 遠くのほうからパトカーのサイレンが聞こえてきたので、本当に不良が通報したんだと何とも言えない気持ちになる。