「まあ凄いじゃない」

 喜んだ顔を見て罪悪感がこみ上げる。

―もう、何回おばあちゃんに嘘をついたんだろう。あたしは嘘つきで…何にも出来ない子どもなのに。

「…ッ、ゴホ!」
「おばあちゃん、もう寝ようよ。お布団敷いてくるから」
「一花ちゃんの話、もっと聞いていたいの」

―こんなくだらない話、聞かなくていいよ。どうせあしたには忘れるんだから。

「……お母さん、泣いてるわね。ちょっと見てくるわ」

 居間のほうを見たおばあちゃんが立ち上がった。その背中をあたしは何度か擦る。

「おばあちゃん、その…」
「うん?」

 いっぱい言わなくちゃいけない。謝らなくちゃいけない…。

「ううん…、おやすみ」
「ええ、おやすみなさい」

 電気を点けずに月明かりを頼りに布団を敷く。

「…お母さんはあたしを置いて出て行ったくせに」

 苛立った声は、誰にも届かないまま湿った空気に溶け込んでいった。