もうもうと煙が部屋を充満する中、悲鳴を上げる前に咳き込んでしまい、死にそうな息をしていると真崎さんが吹っ飛んできた。

「ひぇっ!? えっなに? ま、まさきさん?」

 吹き飛んだ拍子に煙も辺りに散らばっていく。壁に頭を打ちつけているのか、一言も話さない真崎さんをじっと見ていると、扉を失った入口で人影が揺らめいた。

 羽ばたく蝶よりも美しい金の髪を揺らし、恐らく真崎さんを殴った体勢で立っていたのは―…。

「し、塩尾瀬!??」
「無事か浅咲!?」

 あの塩尾瀬が大声を出していることに絶句する。いまにも抜け落ちそうな床を気にせずに駆け寄ってくると、紛れもなく本物の塩尾瀬があたしの前に屈んだ。

「ど、どうしてここに?」
「のどかさんから連絡が来た」

 この場所に連れて行かれる前にのどかさんは誰かに電話をかけていた。