「え、うす! たっ食べてる?」
「金ねえし、食べてない」
「そんな…、今度喫茶店で一回だけならご飯奢ってあげるよ」
「マジ?」
「よせよせ、アホな会話やめろ行くな誘うな」

 あんなにも手ごわそうな縄を強引に引きちぎった周が、ようやく立ち上がった。
 ふらふらの足取りでこちらに歩み寄る。

「周! 血! 服に滲んでる!」
「あーうるせー。腕折れてるけどまあ生きてるし御の字か…」
「折れてる!?」
「つーかいつまで顔近付けあってんだよ、離れろ。一花も抵抗しろよ」

 周が割り込んでくる前に、頬に熱が掠めた。
 驚いて目を見開くと、真崎さんは楽しそうに目を細める。