「一花やめとけ。お前は運動神経悪いんだから」
「ちょっとこんなところで貶さないでよ」
「何にもできない一花なんだから」
「追い打ちかけないで!」
あの無口のひとが周の奥に隠れるあたしを見下ろした。
「やらせてくれたら、コイツ解放してもいいけど」
淡々とした口調で指差す無口のひと。あたしはぽかんと口を開いた。
「一花には手を出すな! コイツは俺のもんだ!」
「ちっ違う! あたしは周のものじゃない!」
「うるせえ、いまは黙ってろ!」
周が相手に噛みつく前に無口のひとが、あろうことか周を蹴っ飛ばした。
無残に転がって部屋の壁にぶつかった周を見て悲鳴を上げる。
「ちょっと周が傷ついたらどうするの!」
「もう傷だらけだよ」