「一花、お得意のお喋りでアイツらの気を紛らわせろよ…」
「無茶言わないでよ…怖いのに」
「ハハ」

 身じろいだ周がそのまま起き上がろうとしたので、背中を支える。
 こちらを見つめる視線に段々と熱が浮かび上がったのを確認したあたしは、周を抱きしめる腕を強めた。

「中学生みたいな顔立ちだな。色気なんて皆無だけど、お前いける?」
「いや、タイプじゃない」
「誰もいねえの? せっかく女がいるのに」

 意味のわからないやりとりに戸惑っていると、周があたしを庇うように背中に隠した。

「いいか、一花。隙を見るんだ」
「八人もいるけど…」
「警察だっていつ来るかわかんねえ。緊張状態が緩んだらその隙に…」

 すると、あの無口だった男のひとがあたしに近づいてきた。