緊張した空気に疲れ切ったあたしは、遠のいてしまいそうな意識を必死に手繰り寄せた。

 吐きそうになったり、ひどい頭痛に襲われて苦しんでる間に、三台のバイクは山間を駆け抜けて行った。

 道なき道を進み、人気のない道路をものすごいスピードで進んでいくと、小さな山小屋が見えた。

 あたしが掴まっているか、意外にも無口のひとは確認してくる。
 途中で手を掴まれたときは悲鳴を上げそうになったけど、相手は気にせずにそのまま自分の腹部まで引っ張ったため、より密着する体勢になってしまう。

 太陽が遠くの山に姿を消そうとした辺りでバイクが止まり、あたしは無口のひとに抱き上げられたまま小屋まで連れて行かれた。
 ろうそくが灯された室内で蹲る人影を見つけて、あたしはすぐに誰かわかった。

「周っ!」
「…あ? なんで一花がここにっ…」