十歳のときのあたしと周、友梨が写ってる写真で背景がぶれてる。
 あたしがぼんやりしている間に拘束から逃れたのどかさんが「逃げなさい!」と叫んだ。

「周がいる場所はどこ? そこに連れて行って!」
「あの女と違って聞き分けがいいな」
「すぐ近くの山のほうって言ったところでわかんねえだろうけど」
「その代わり彼女には手を出さないで」
「浅咲さん、あなたっ…」

 腕を後ろで掴まれたあたしは、ケータイを差し出した男のひとを見上げた。

「まあいいか、行こうぜ」

 のどかさんから手を離したひとがちゃんとついてきてることを確認して、あたしはそのままバイクに乗せられた。
 あのケータイを差し出したときも無口だったひとが前に座ったので、振り落とされないためにも控えめに服を握った。

 振り返るとのどかさんが誰かに電話をかけてる。
 そのことに誰も気付いていないのか、どんどんバイクが音を立てながら走り出した。