「きのう、バイクうるさかったし最悪。周静ったら何してるのよ」
「バイク?」
不思議そうな顔を見せる塩尾瀬に、あたしは首を傾げた。
「この辺に住んでるなら聞こえたはずだけど。不良が私たちの家の近くを回ってるのよ」
「浅咲も聞こえたのか?」
「うん、本当に夜遅くに聞こえたよ」
周が前に廃墟が立ち並ぶ薄暗いアパート、と言っていた気がするけど、実際塩尾瀬はどこに住んでいるんだろう。
「俺、この町のはずれだけど、山のほうなんだよ」
「山? え、東京方面ってこと?」
「そ。縹が前に言ってた廃墟が立ち並ぶ…っていうのはどこか知らねーけど、俺の住んでるところじゃない。周りには森しかねえし」
「友梨がお母さんから聞いた噂話を周に教えたんじゃ…?」
「そもそも私周静に何も言ってないわよ。アイツ一花には嘘つかないけど、それ以外には結構嘘つきだから。本当嫌になるわ、一花だけを特別扱いして」