そっぽを向いてしまった塩尾瀬の表情はわからない。声音もいつも通りだ。
 不安になって胸元を押さえると、そこに仕舞っていたお守りの存在を思い出した。

「あ、これ! 友梨に教えてもらって作った押し花。二枚作れたんだけど、友梨はいらないって言ってたから、一枚は塩尾瀬のね」
「浅咲が作ったほう?」
「あ、あたしが作ったほうは、その不恰好で」

 本当はプレゼントにしたかったけど、あんまりな出来に次の機会にしようと思っていたのだ。

「そっちでいい」

 塩尾瀬は友梨が作った完璧な押し花より、花びらがよれて空気が入ってしまった押し花を受け取った。

「い、いいの? もっと綺麗な押し花を作ってプレゼントしたかったんだけど」
「じゃあ次もまた作ってよ」

 塩尾瀬の「次」という言葉に目が潤んでしまう。