そんなあたしとは違い、久しぶりに朝から顔を合わせた塩尾瀬の顔色は真っ青だ。

「あたしに前、土みたいな顔色って言ってたけど…同じ色になってるよ」
「父さんにアルバム見せただろ。つーか、何でアイツが喫茶店に通ってんのか謎だけど…」
「何か気に入ってくれたみたいだよ。あ、傘! きょう持ってきたんだ。ずっと返せなくてごめんね」
「いや、持っててよかったのに」

 いつ雨が降るかわからないから、最近は塩尾瀬の傘を持ってきていたのだ。
 しっかりと受け取ってくれた塩尾瀬の顔色を見ようとして、太陽の光を浴びる腕に目が留まった。
 袖を捲っていても、塩尾瀬の腕に痣は見えない。以前よりも逞しくなっているような気がする。

「…痣消えてよかったね」

 気になったことはなるべく言っておきたくて、明るい声で話しかけてみる。

「父さん変わったんだよ」

 それは暴力を振るわなくなったということだろうか。
 あたしが問いかけなくても塩尾瀬は答えを言った。

「俺が、浅咲の話を父さんにするようになって。それで父さんが喫茶店に行くようになってから、何か憑き物が落ちたかのように優しくなったんだよ」
「そ、そうなんだ。あたしの話してくれたんだね、嬉しい…ありがとう」
「…浅咲の存在が大きすぎるんだ」