周は平日も迎えに来てくれるけど、お店に入るのは日曜日だけだ。
 シフトの紙をケータイで撮られてからは、時間ぴったりに迎えに来る。
 不思議なことに塩尾瀬のお父さんと同じ日に来店するけど、きょうはまだその姿が見えない。

「こんにちは」

 塩尾瀬のお父さんは長い髪を垂らしながら、アメリカンコーヒーを一杯だけ飲んでいく。
 大人のひとって感じがして、周のお父さんとは違った意味で憧れた。
 いつもなら「ああ、いつもの頼む」で会話が終わるはずなのに、店内が混んでないのを確認しているのか視線を動かせる。

「お前、つるむ相手は選んだほうがいい」
「…つるむ?」
「何回か店に来てた男と話してただろ? アイツのことだ。結構噂になってるぜ」
「……うんん、どなたでしょう?」

 もしかして周のことだろうかと思ったけど、それ以上に塩尾瀬のお父さんが周りを見ていたことに驚いた。