―「お前…、友梨乃にアイツを奪われてたかもしれねえんだぜ」
―「友梨乃はお前に彼氏ができようもんなら、抜け駆けは許さないつって普通に彼氏取ると思うけどな」

 周の言葉を思い出して顔をしかめる。なんて嫌なことを言うんだろうとため息をつきたくなった。

 茉莉と一緒に玄関のところに向かうと、驚くことに江連先輩が両腕を組んで待ち構えていた。

「一花に嫌なことしたら、うちが先生に言いますから」
「しないわよ。…今年も写真応募するの?」

 茉莉が腕を掴んでくれなかったら、あまりの緊張感に尻もちをついていたはずだ。

「もう、してきました。今年はひまわりの写真で…」
「そう…、野球部でのこと悪かったわね。写真が職員室前に飾られるのを待ってるわ」

 それだけを言って踵を返した江連先輩は、以前よりも綺麗に見えた。

「やな感じ。彼氏ができたって噂で聞いたけど、今更謝ってくるなんて卑怯よ」
「…写真、知ってたんだ」
「学校中のひとが知ってるでしょ。全校生徒が集まる集会で賞状貰ってたんだから」

 それでもわざわざ謝りにきた江連先輩は、ものすごく勇気が必要だったはずだ。

「一花、最近雑貨屋来てないの? おじいちゃん寂しがってたよ」
「あ、バイト始めちゃって…。おばあちゃんも入院してるし、いろいろ忙しくて」
「そういうことは早く言ってよ! バイト見に行くから」

 塩尾瀬と一緒に雑貨屋に行くのもいいな、と淡い期待を抱きつつ裏庭に戻った。