朝のホームルームが始まるギリギリに学校に来た塩尾瀬は、まるで十日間絶食したような顔つきだった。
もしかしたら彼女さんと再会してしまったのかもしれない。
―そもそもお兄さんがいる花屋さんなら、奥さんである彼女さんもいるのかも…。
授業で名指しされたらよどみなく答える塩尾瀬が、きょうに限って「わかりません」と言った。孝橋先生はチョークを落としてしまうくらいに驚いていた。
「実は友梨と千日紅と百日草の押し花作りたいんだけど、一輪貰っていいかな」
裏庭に来てくれた塩尾瀬に問う。元気がない千日紅を見た塩尾瀬は頷いた。
「いいんじゃない」
「じゃあ友梨、放課後さっそく作ってみよう」
「あんた幽霊みたいに覇気がないわね」