夜ご飯を食べ終えるとすぐにお酒の缶を開けて飲み始めたお母さんを横目に、あたしはテレビから聞こえる声に耳を傾けた。
 ニュースでは知らない町や都会での事件を報道している。

「あんた、彼氏とかできたの? 周静くんにまだ好きって言えてないわけ?」

 おばあちゃんが「やめなさいよ」と注意するけど、お母さんの細い眉がつり上がっただけだった。

「い、言わないよ。いまのままでいいの」

 レースの布がかかった素敵なテーブルを見下ろす。
 このテーブルは一度も会ったことがないあたしのおじいちゃんが、大木を割って作ったものらしい。
 お母さんが缶を倒すと、泡だった液体が零れて布に染み込んでいく。

「一花が周静くんのところに嫁に行ってくれたらお母さんとっても安心するのに。あの十静がいるんだから、何も危ないことなんてないし」
「理花、飲み過ぎよ」
「お母さんうるさい」

 おばあちゃんに向かって唾を飛ばしたお母さんは、どんどん缶の中身を減らしていく。
 あたしは「もう寝るね」と言って、さっさと自室に引っ込んだ。