土日は午後から五時間ほど働いているので、休憩時間がある。そのときに裏口で涼んでいると一服しにのどかさんが姿を見せるのが、ここ最近ではお決まりになっていた。

「竜くんってカッコよくてさ、物覚えもいいし、完璧に見えるでしょ。でも、聞かれたことは明け透けに答えちゃうし、ファッションに全く興味ないし、いつも無表情だから何考えているのかわかんないの。そんなミステリアスな一面もいいけどね」

 あたしが塩尾瀬に聞けなかったことを、のどかさんは愚痴を交えて教えてくれる。

「連絡先は聞いたの?」
「いえ、最近お母さんからケータイを買ってもらって。まだ聞けてないんです」
「あら、じゃあわたしのほうが有利ね。彼とは毎日連絡取ってるもの」

 ぷかりと浮かんだタバコの白い煙の輪を目で追いかける。

 あたしも塩尾瀬もお互い早朝に部活で会えるから、気に留めたこともなかったと思う。
 現に塩尾瀬は一度も連絡先を聞いてこなかったから。