「あ、さ、ざ、き、さん? あのね、お客様のところに違うコーヒーを持っていかないで!」
「す、すみません!」
出勤してすぐに響いた怒声に杉枝さんが苦笑した。
「私が頼んだんですよ。説明はしたんですけどコーヒーの色は似てますし、どちらがどのお客様の頼んだものなのか間違えやすいと思います」
「でもどうやって見抜いたんですか?」
あたしのもともとの知識は「ブラックコーヒー」と「アイスコーヒー」くらいだ。
カフェオレ、カフェラテとかは聞いたことがあるけど違いがわからない。
ちゃんとのどかさんから借りたコーヒーの本を読んでいるけど、カップに注がれたコーヒーの色は全く一緒なのだ。
運んでいるうちにどっちがどのお客様のコーヒーだったのかわからなくなってしまう。
「匂いでわかるのよ。淹れ方だって違うんだし、わたしくらいになれば一目瞭然なんだから」
「浅咲さんも練習がてらコーヒーの淹れ方も学んでみますか?」
「え、お願いします!」