押し倒されたときの記憶と、唇に触れた熱が瞼の裏に蘇る。
足を止めそうになったあたしを見透かしているのか、周の大きくて分厚い手があたしの手を掴んだ。
「ケガ…痛い?」
「そうでもねえよ。それより親父から聞いたけど、バイトしてるってマジ?」
「うん、隣町の喫茶店でね。ほら、大通りの」
「わかんねえけど見に行きてえ」
「今度教えるよ」
口角が上がった周は本当にお父さんそっくりだ。
「周…なんで学校に来ないの?」
手を繋いだままあたしの一歩先を歩く周に問いかけた。
「俺が一花のいじめを見過ごしたことを、親父がマジで手ぇつけられないくらい怒った挙句、俺を転校させるって言い出して」