伸びてきた手があたしの頭を撫でた。いつも安心をくれる手のひらに、強張っていた肩の力を抜いた。
「いま隣町で何人か家出して逃げてる問題児が多くてな。そちらの捜査に俺も加わる可能性がある。そうなったら様子を見に来れない」
「…はい」
「でも何かあったら交番に連絡してくれ。恋愛相談はなるべく聞きたくないがな」
息を小さく吐き出した周のお父さんが、制服の裏のポケットから何かを取り出した。
「理花から聞いたがバイトしているんだろう。無理はしないように」
手渡されたのは可愛らしいテントウムシと花がついたキーホルダーだった。
「これ…、去年の写真の…」
「お前が何度も見せに来たから俺も忘れられなくてな」
「ありがとう、大事にします!」
塩尾瀬と出会っていなかったら、写真のことを思い出して辛くなっていたはずだ。
でもあたしは満面の笑みを浮かべて受け取っていた。