「……あの、聞いていいですか？」

　やっぱり周のお父さんには嘘をつきたくない。だからあたしは話を逸らそうと、頭の中で話題を探った。

「構わんが」

　凛々しい眉をちょっと上げた周のお父さんを見上げた。

「大切なひとに、友達のままでいたいって言われて」

　いつもは鋭い眼差しに困惑が滲んだのを、あたしは見て見ぬふりをした。

「そのひとには好きなひとがいて。でも、結婚するらしくって…。だからあたしがそのひとの代わりになったんです」
「それは俺に言う話じゃないだろう。母親に言うべきだ」
「お父さんには何でも言っちゃうから」

　周のお父さんは呆れたような声で「全く困ったものだな」と呟いた。

「俺から言えるのは、そうだな。代わりが辛いなら本当の存在になればいい」