「周静はどうした。同じ野球部だろう」
周のお父さんを見るたびに思う。血の繋がった親子ってどんな会話をするんだろうって…。
正義感を宿した瞳があたしを見下ろした。
「友梨と先に帰っちゃって」
「…そうか。野球部のマネージャーは楽しいのか?」
何もかも見透かしてしまいそうな周のお父さんに、あたしは嘘をつきたくなくてそっぽを向いた。手にじんわりと汗が溢れ出てしまう。
「あの、…お仕事、いつもお疲れ様です」
「急に改まってどうしたんだ。妻も息子も言わんぞ」
おかしそうに笑った周のお父さん。
それにほっとしながら、学校のことやおばあちゃんがおすそわけした野菜についてなど、他愛ない話を続ける。
あたしがお父さんを亡くして幼なじみの父親を代わりにしているみたいに、周のお父さんも周とは違って反抗期のないあたしを娘としてよく構ってくれる。
この擦り切れそうな関係が、どんな噂が広まろうとあたしは繋がっていてほしいと思った。