先に教室に向かったふたりを追いかける前に、水飲み場でぼんやりと空を見上げるひとを見つけた。ひまわりみたいな髪が綺麗で話しかけるのに一瞬遅れてしまった。
「ここにいたの?」
「ずいぶんと賑やかな部活になったな」
相変わらず塩尾瀬の表情は晴れないままだ。
こんなにも日差しが降り注いでいるのに、塩尾瀬からは冷たい雰囲気が漂っている。
「…花屋さんどんな感じ?」
「そんなに苦ではなかったぜ。浅咲、バイトは?」
「うん、採用されたから働いてるよ。それと…フィルムカメラでひまわり畑を一枚だけ撮っちゃった、ごめん」
「構わないよ」
近づいてきた塩尾瀬を見つめる。あたしよりも色んなことを知ってて、勇気づけてくれるような言葉をさらっと言う彼は、いま何を考えているんだろう。
「……代わりに、本当になるつもり?」
「塩尾瀬が笑ってくれるまで」
あたしの返事を聞いて、塩尾瀬は目を瞬かせた。まるで初めてその言葉を知ったみたいな反応だ。