あたしの返答に茉莉が黙り込むと、友梨は屈んだ姿勢で器用にお弁当を食べ始める。
「周静が不良とつるんでて、隣町で問題起こしてるって知ってた?」
「まあ、お母さんが周りから話聞いてるから」
ふたりの会話は先が見えないままどんどん進んでいく。
「不登校のひとも誘って、大人数であちこちケンカしてるみたい。おじいちゃんがさ、近所のひとから聞いてうちに忠告してきたのよ。あんまり周静と関わるなって」
「周静は一花が迎えに行けばすぐ帰ってくるから」
「どんな自虐ネタなのそれ」
カバンに押し込んでいたイチゴジャムのパンを頬張ると、茉莉が「お弁当は?」と訊ねる。
「作る余裕なくて…。まだご飯作るのも下手くそだし」
「茉莉のほうがひどいじゃない。家庭科で味噌多めに入れて味濃くしたし、塩は豪快に入れるし、火加減強かったせいで焦がして失敗ばっか」
「うるさい、何でも器用にこなしてひとをバカにしてる友梨乃よりマシだから」
「バカにしてるんじゃなくて事実よ」
ふたりの会話は予鈴のチャイムが鳴り響くまで続いた。