夏休みがあっという間に終わると、あたしは友梨と一緒に裏庭に向かった。
猛暑日なだけあって無風だ。それなのに百日草は元気に背筋を伸ばしている。
千日紅もまだ元気そうだけど、変色した花びらがいくつか目立つ。それを摘みながら、キイチゴの形をした花をじっと見つめた。
「どうして百日草とか千日紅を選んで育ててたんだろう?」
「お盆のお供えで有名だけど、それは関係ある?」
もしかして塩尾瀬のお母さんにお供えしたかったんだろうか、と首を傾げた。
「その栞は?」
あたしは忘れないように、胸ポケットからわざと見えるようにしていたお守りを引っ張り出した。
「あ、ねえ、友梨は押し花とか作れる?」
「お母さんなら知ってるかもしれないけど…、いまピリピリしてるから」
胸ポケットから取り出したお守りは、まだ鮮明な色を保っている。
「まあ、ジニアは押し花にするの簡単だと思うよ」
「そうなの?」
「厚みのあるバラとかチューリップは難しいんだって。お母さんが言ってた」
友梨も隣に屈んで花の様子を見る。その姿はどこか塩尾瀬と重なって見えた。