あたしの通う高校には三カ所帰る道が存在する。

 ひとつは校舎に沿うように歩いて、玄関の反対側に向かうと門がある。近辺に住んでるひとはこの道を使うことが多い。

 ふたつ目は玄関を出て右に曲がり、職員室前を通りながら、公衆電話が設置されている下り坂に行くと駅が遠くに見える。電車通学のひとが使う道だ。

 最後はサッカーボールや野球ボールから身を守りながら、校庭を突っ切る危険な道だ。
 自転車通学や家の方角次第でこの道を通らなければならないひともいる。
 あたしや周、友梨はいつもこの道を使うのだ。

 すっかり日が暮れてしまった帰り道を急いでいると、後ろから自転車のベルが鳴り響いた。

「一花、お前また居残りか?」

 あたしの隣で自転車を止めて顔を窺ったのは、周のお父さんだ。
 町のパトロールをしていて、いつもあたしを心配してくれる親切な警察官で、あたしの憧れのひとだ。
 かっこいい警察の制服を見ながら頷くと、あたしの肩に引っかかっていたカバンを自転車のカゴに入れて、そのまま歩き始めた。