知らないうちに涙を零すと、のどかさんが慌てながらハンカチを差し出した。
「ちょっと何で泣くのよ!?」
のどかさんの大きな声が聞こえたのか、幸さんが裏口の扉から顔を見せた。
「え、のどか泣かしたの? やめてよ、杉枝さんが見たら怒るよ」
「違う! 言わないで!」
ほら、また知らないうちに涙を零している。
ハンカチをくれた塩尾瀬の姿が脳裏を過ると、悲しい気持ちが膨らんで涙の粒が大きくなっていく。
差し出されたハンカチを断って、塩尾瀬から貰ったハンカチで涙を拭った。
「…すみません。あしたからいろいろ教えてください。お疲れ様でした」
「え、ええ、またあした…」
「マジでのどか何したの?」
「何もしてないっての!」
賑やかな声を聞きながら自転車に乗って、暗くなった空を見上げる。
また塩尾瀬の話を聞くたびに泣いてしまうだろうか、と熱くなった目頭を冷ますために頭を振った。