接客の仕方や挨拶、洗い終えたお皿の置く場所、休憩室の使い方。
それらを教わってから、初日のお仕事は終わった。
土日はずいぶんと混雑するみたいで、新人のあたしも接客を任せるかもしれないと幸さんから言われた。
あたしは気合いを入れ直して、あの可愛くない学校のカバンに渡された紙を仕舞った。
「帰る前に聞いてもいい?」
喫茶店の裏口に止めていた自転車のところに向かうと、近くにあった街灯の下でタバコを吸うのどかさんが呼びとめた。
「…竜くんと一緒にこの店訪れたらしいけど、あれデートだったの?」
「デート?」
「男女ふたりだけで出かけるならデートだと思うけど。なに? 課外活動とでも言うの?」
写真部でのことを聞いてくれた塩尾瀬が瞼の裏に浮かぶ。
そういえば花まつりにも誘ってくれて、まさにいまから希望の光に向かって進んでいくような…、どこか浮ついた気持ちでいた。
友達のままなんて嫌だと思ってたけど、彼女の代わりになるほうがずっと嫌なことだ。
―新学期になったらどうなるんだろう。またキスされるのかな…、彼女の代わりとして。