「この子がバイト兼僕の妹ののどかね。気の強い女の子だから、一応敬語使ってあげて」
「一言余計よ!」
初めての出勤日。休憩室で顔を合わせた幸さんは、ひとりの女性を紹介した。
可愛らしいウサギの刺繍が入ったチョコレート色のエプロンを身に纏う彼女は、塩尾瀬と同じように目がつり上がっていて、瞼には派手な色をのせてる。
塩尾瀬と全く同じ金の髪が複雑に編み込まれていて、あたしの意識を釘づけにした。
「貴方すっぴんとか正気? ある程度のオシャレはマナーなのよ? いい? 竜くん推薦だからって調子に乗らないで」
淡々とした言い方でもなかなか迫力がある。あたしはごくりと唾を飲みながら頷いた。
「あーあー、失恋したからって見苦しいよ」
「最低! あんたデリカシーないんだから!」
「僕オーナーなんだけど敬語使ってないの、君だけだからね?」
「お兄ちゃんに敬語使う妹なんていないわよ!」
友梨とは違った眼差しを向けられてちょっとたじろぐ。後ろで幸さんが宥めているけれど、彼女はお構いなしだ。