次の日も、裏庭に塩尾瀬はいなかった。やっぱり夏休みが終わるまで会えないんだろうか。
 しばらく待っていると友梨が自転車とともに欠伸を手で隠しながら現れて「早いね」と驚いていた。
 水やりを終えると図書館に向かう。友梨が自転車に乗るのは中学のとき以来だと笑った。
 図書館の涼しい空気に癒されながら持ってきた水筒を飲む。あたしの宿題を見ていた友梨が顔をしかめた。

「一花、どうしてこんな簡単な問題も解けないの?」

 塩尾瀬と出会う前も、靴を揃えなかっただけで同じようなことを言われた。
 それが懐かしくて、どこか自分が変わったような気持ちになる。

「友梨は宿題終わった?」
「まあ、大体は。一花は習字を一番に終わらせなさいよ。毎年最後まで残ってて、徹夜して書いてたじゃない」

 見抜かれていたことに頬が赤らんでしまう。友梨は「赤くならないで」と冷たく言ったけど、こうして勉強を教えるために図書館まで来てくれるところは優しい。