塩尾瀬と会わないまま夏休みはどんどん過ぎていく。
「もしもし、友梨?」
―「何か進展あったの?」
「…ううん、塩尾瀬が家の用事でいま会えなくて」
お母さんがいない時間を見計らって友梨に電話してみたけど、すんなりと話せて胸を撫で下ろす。
―「寂しい?」
「そりゃあ…、寂しいけど頑張らなくちゃいけないから。それより花の肥料について塩尾瀬から教えてもらったんだけど、いざ実践ってなると不安で…」
―「あした朝から学校行くから、そのとき教えるよ。それより宿題はどうなってるの?」
いじわるな顔で聞いてくる友梨の表情がポンッと浮かんだ。
「半分は終わったけど自信なくて。よかったら教えてほしいんだけど…」
―「いいけど、私の家も一花の家もきっと親が許さないだろうから図書館でいい?」
「うん。ありがとう、友梨」
ぽっかりと空いた心の穴を友梨と話すことで見て見ぬふりをすることができた。