一晩経ってから電話をかけると、面接の日程はすぐに決まった。
周のお父さんみたいに、きっちりと整った身なりで喫茶店に向かった。
出迎えた杉枝さんにお礼を言い、休憩室で簡単な面接を受ける。
念のため白シャツに地味な黒いズボンを穿いてきたけど、どうやらこの服装で正解だったみたいだ。
「あ、彼がオーナーの幸さんです」
「こんにちは、君が浅咲ちゃんだね。僕は幸康也、よろしく」
「は、はい、よろしくお願いします」
杉枝さんの言う通り、オーナーを務める彼も物腰がやわらかく、愛想よく笑った。
「オーナーってなんでしょうか? リーダーみたいな感じですか?」
「あはは、違うかな。この店の所有者…、まあ社長って捉えてくれていいよ」
「しゃ!? え、若いですね…?」
「よく杉枝さんをオーナーだと思うひとが多いんだけどね。彼には店を任してるけど、正社員みたいなものさ」