カバンを探ってカメラを取り出した。
邪魔にならない場所に座って、ひまわりを下からのアングルで撮ってみる。
―綺麗…、来年はひまわりも育ててみたいな…。
蒸し暑い中、空だけは梅雨に置いて行かれたように曇っている。山の向こうは青空が見えているのに、あたしが立っている場所だけが晴れていないみたいだ。
フィルムカメラを取り出して、罪悪感を感じながらもシャッターを切った。
「……この機会を逃したら撮れなさそうだから、塩尾瀬も許してくれるよね」
言い訳してるみたいな独り言を呟いてから、また自転車に乗った。
図書館で勉強してから、塩尾瀬のバイト先に向かう。
飲食店が立ち並ぶ大通りは色んなひとが歩いてる。オシャレな服を身に纏った女のひとは恋人と手を繋いで幸せそうだ。
老夫婦らしきふたりは寄り添っているだけでも絵になる。
幸せそうなひとを見ていると温かな気持ちを貰える。塩尾瀬と周りのひとみたいな関係になれなくても、ただ傍にいるだけで恋人みたいに見えるのだ。それで十分だと思えた。