「勉強、教えられなくてごめん」
「え、いいよ! 謝らないで」
「…肥料のあげ方とか、いまから教えるから。覚えておいて」

 一通り花の育て方を教わると、塩尾瀬は憂いた空気を纏ったまま帰ってしまった。

「代わりの彼女って認識で合ってるのか、聞けなかったなぁ…」

 お守りを胸ポケットから引っ張り出すと、潤んだ瞳から涙が零れないように堪える。

「ううん、悲しいことを考えるより明るいことを考えないと。そうだ、写真のコンテストがもうそろそろだったし、喫茶店に行く道中で探してみよっ」

 あたしはお守りを握りしめると、勢いをつけて立ち上がった。
 近くに止めていた自転車に乗ると、カゴに荷物を入れてペダルを踏み込んだ。
 ひまわり畑で自転車を止めると、空を見上げた。

―塩尾瀬の髪色と同じひまわりと…、いまのあたしと塩尾瀬の気持ちみたいな空…。案外いいかも。