夏にしては珍しく、いまにも雨が降り出しそうなその日。
泣きそうな顔にならないように気をつけながら裏庭に向かうと、太陽の光にも負けない金の髪を見つけた。あたしが自転車から降りると、塩尾瀬がこちらを向く。
少しだけ日焼けした肌、遠くからではわからない青みがかった瞳。薄い唇に視線を向けて意識が吹っ飛びそうになった。
「きょうから俺、兄さんの家に行くから。夏休みはもう会えない」
「そう、なんだ」
逸らされた視線に胸が痛くなるけど、気まずいのはいまだけだ。
勇気を振り絞って塩尾瀬の隣に屈んだ。
「バイトはきのう辞めてきた。浅咲がバイト探してるって言っておいたけどよかった?」
「あ、ありがとう。さっそくこのあと行ってみようかな」
オシャレな喫茶店の外観を思い出す。もしバイトが決まったら、あのお店に通うことになるのだ。
楽しみな気持ちが膨れると、自然と口角が上がっていた。