あの時、周の息遣いを感じたみたいに…。

 塩尾瀬が傍にいる。顔を近づけられても、あたしは嫌だと思わなかった。

―あたしね…、本当は塩尾瀬と友達のままなんて嫌だと思ってた。だからいま塩尾瀬の彼女みたいな関係になれて嬉しい。例え偽りだったとしても…。

 触れ合った唇は熱を持っていて、体中に伝染していくみたいに広がっていく。

「こういうこともするんだぜ…。本当にいいのかよ」

 唇を離した塩尾瀬がいまにも泣きそうな顔で言うから、あたしからキスをしていた。

「い、嫌じゃないから…。あたしは、…あたしは恋愛の意味で、これから先ずっと塩尾瀬のこと好きでいるからっ」

 目を丸くさせた塩尾瀬が至近距離で映る。その顔を忘れないように目に焼き付けようとしたとき、後頭部に回された手が力を込めた。
 深くなっていくキスと塩尾瀬の力の強さがどんどん勢いを増していく。
 両手で塩尾瀬の背中を抱きしめると、あまりにも細くってまた涙が零れ落ちた。