突き放されたことに動揺して後ずさると、塩尾瀬はうつむいた。転校してきた初日みたいに、誰とも仲良くならないような冷たい空気に喉がひりつく。
「園芸部なんだけどさ、昼休みくらいしか見に行けない」
「…それはいいけど、無理してない?」
「心配されるほど弱ってない」
一度も目が合わないなんてどうかしてる。
あたしの希望の種に水をくれるのは塩尾瀬だけなのに…。
―言っちゃいけない…わかってる。塩尾瀬を引き止める術なんてあたしにはない…。
「……結婚するって」
雨なんて降っていないのに、塩尾瀬の声は震えていていまにも凍えてしまいそうだった。
「兄さんと、前に言った彼女が結婚するって聞いて。俺、自分がまだアイツのこと好きだったんだって気付いた」