何か言葉を探していると、塩尾瀬がどこか遠くを見つめながらどんどん言葉を続けていく。

「それでバイトする時間ないから辞めることにしたんだよ」
「…手伝いって、遠いんじゃ」

 影よりも暗い表情を浮かべる塩尾瀬はあたしを見ようとしない。

「学校から二時間はかかる」
「卒業まで、その、待ってくれない感じ?」
「兄さんは俺の事情より花屋の経営のほうが大事だから」

 手伝いに行くと決まったとしても、こんなに表情が晴れないものだろうか。

「それとこれ以上逃げるなら、暴力好きの父親を刑務所にぶち込んでやるって。むかしから兄さんは父さんのことが嫌いだったから、情なんてないんだろ」

 つい塩尾瀬の袖を縋るように掴むと、あっさりと引きはがされて愕然とする。

―なんで…? なんで友達でいるって決めたあとからずっとこんな態度なの?