「やりすぎじゃね? あれ、いつか問題になるぜ」
「見るなよ、巻き込まれる」

 校庭で練習しているのはサッカー部か陸上部だ。
 野球部のひとと同じように、誰もが止めようとしない。あたしも、声を上げて抵抗する気力がなかった。

「…どれ?」
「いつもの」
「ミルクティー?」
「そ、早くね。熱中症になっちゃうから」

 友梨のきめ細かな白い肌を見上げた。水筒を振り上げたままの姿勢で、みじめなあたしをあざ笑ってる。
 あたしと違って汗ひとつかいてないし、部活のレポートを毎日文字で埋めてるせいでできたぺんだこまみれの手とは全然違う。
 周が見ていないとき、友梨はひとが変わったようにあたしをいじめてくるのだ。

「お金、は?」
「あーきょう持ってないから、あしたお母さんから一花のおばあちゃんに渡すよ」
「…わかった」

 早くして、と江連先輩に肩を突き飛ばされて尻もちをついた。
 慌てて立ち上がったけど、湿った土がジャージのズボンにくっついてしまった。