お店を出る前におじいちゃんが塩尾瀬を引き止めた。

「顔色が悪いよ。無理しているならゆっくり休んだほうがいい」
「…はい」

 頭を下げたあと、あたしに続いて外に出る。緑の葉が頭上で生い茂る中、塩尾瀬は自転車にまたがると隣町まで一言も話さないまま向かった。

「きょうはお休みなんだ…、そっか。夏休みだもんね」

 おじいちゃんが教えてくれた花屋を見つけるのは簡単だったけど、お店が開いていなかったのは予想外だった。
 喫茶店からはそう離れていないし、また休憩しに行くのもいいだろう。
 色が溢れたお店を眺めつつ、服の袖で汗を拭う塩尾瀬を見上げた。

「塩尾瀬のバイト先行ってもいい?」
「…そうだな」

 空はこんなにも晴れ渡っているのに、塩尾瀬はどんどん顔色が優れなくなっていく。

「待って」

 すぐに自転車に乗ろうとする塩尾瀬を引き止めた。