「……バレてたんだ、友梨に」

 呟いた声は熱を含んでいたけれど、塩尾瀬の冷たい態度を思い出してどんどん冷めていく。

「お母さんの言ったプレゼント…、何か渡してみようかな」

 塩尾瀬の冷たい空気が消えることを祈りながら、プレゼントについて悩むこと一週間。

「わあ、ついに開花したんだね!」

 はしゃぐあたしの目の前にはたくさんの百日草が花開いていた。
 さっそくカメラに収めるとまだ蕾のままの百日草を見つけて、あと数日かなと期待を込めた視線を向ける。塩尾瀬に訊ねてからフィルムカメラを取り出して撮ってみた。

「どれくらいまで咲くの?」

 きらめく朝日を浴びながら、腕まくりをするようになった塩尾瀬は考える間も置かずに答えた。

「大体十月の終わりくらいまで」
「結構長いんだね。もしかして百日くらい?」

 指折りで数えながら頭を悩ませる。どこかそっけない塩尾瀬に話題を振ろうとしたけど、結局何も言えず口を閉ざした。