友梨からの返事がなくて怒らせてしまったかと思ったけど、お母さんが居間から様子を見に来る前に声が聞こえた。

―「それを好きって言うんでしょ。とっくに知ってるよ」
「すっ…!? え…知って…?」
―「一花が塩尾瀬くんに引っ張られながら裏庭に行くときさ。周静の声を無視してたでしょ。その時点で好きになったのかなって思ってたのよ」

 あたしがあからさまだったのか、友梨が察しがいいのかわからなくて、どんな言葉で言い返すべきか悩んだ。
 そんな悩みを吹き飛ばすように友梨の声が聞こえる。

―「夏休みは園芸部に行かないけど、応援はしないから」
「う、うん…わかった…」
―「何でって聞いてよ」

 そういえば友梨はむかしから「何でって聞いて!」とせがんできたことを思い出した。

「なんで…?」
―「周静と私のことを諦めないでほしいから。私は一花のこと、本当にずるいって思ってたし邪魔だって言ったこともあるけど、嫌いじゃないから。だから周静と三人でいることも受け入れようと思ったの。…それなのにアイツと付き合うから離れるのはむかつくもん」