電話をかけ直すとすぐに相手の「もしもし」が聞こえた。ちょうど友梨が出てくれたようで胸を撫で下ろす。
「電話出れなくてごめんね。…何かあった?」
どんな言葉が飛び出すのか想像できなくて、色んな意味が詰まったドキドキを感じていると意外にも明るい声が返ってきた。
―「その、園芸部なんだけど、夏休みも花の水やりあるでしょ? それ手伝いたくて、何時に行けばいいかなって…」
本当に園芸部に入るつもりでいる様子に面食らいつつも、憂いた金の光を思い出して、頭の中で優しい言葉を探った。
「…友梨、あたしね」
―「うん?」
「塩尾瀬ともっと仲良しになりたくて」
相手の声が通り雨みたいに突然止んだけれど、あたしは頑張って言葉を続けた。
「だから、その夏休みの間だけはふたりでいたくて…」
ごめん、と口癖のように言いそうになったけど堪えた。