「卒業生とか隣町のひとがいろんな場所で走り回るのよ。みんな不安があって、そのはけ口が見つからないから、夜中に遊んでストレス発散してるんだと思うわ」
「……家とか入ってこないかな」
「さすがにないわよ。いままでだって一度もないでしょ」
「去年もバイクの音聞こえた?」
「ええ、毎年聞こえてるわ」
バイクの音を聞き終えたあと、お母さんにおやすみの挨拶を言って自室に戻った。
静まり返った部屋で、きょうの出来事を思い返す。
塩尾瀬から言われた友達宣言…、周が家族と顔を合わせていないこと…、それから新しいバイトについて。
不安は風船のように大きくなっていくけれど、その中には温かな希望が入ってる。
「あたしにできることを…すればいいだけ」
魔法の言葉みたいに唱えると、塩尾瀬のひまわりみたいな髪を思い出しながら布団にもぐった。